cycle

全体の流れ

 

ここでは家計を管理するための流れを説明します。

家計管理の主な作業は家計簿づけとその前に行うライフプラン(人生計画)と年間予算、月間予算を作ることと、家計簿づけの後に行う家計チェック、計画に沿うように節約を行ったりすることです。これらセットで繰り返すことで家計が改善していきます。

家計管理の理想的なサイクルを示すと次の通りです。

 ここでは最初の現状把握について説明します。

現状把握

世の中一般のいろいろな仕事やプロジェクトと同じように、家計に関しても最初に現状を把握して分析することで今後の方針を立てやすくなります。しかし、家計の場合は家計簿をつけて細かいところがわかるため、家計簿をつけ始める前は消費に関する現状把握が難しいかもしれません。

しかし、まったくわからない状態で家計管理を行っていくのは、暗闇を歩くようなもので、管理を途中でギブアップしてしまう原因になりかねません。大雑把でも把握できることはあるはずです。例えば次の表のように、何にいくら使ったか分からずとも、収支だけは銀行口座をチェックすることで分かります。

家計管理に取り組む上での方針を最初の段階で決めるためにも、家計管理を始めるに当たって、収支以外にも次の様な事柄は最初に整理しておくと良いと思います。 

世帯

家計は1つの世帯ごとにつけるのが基本ですが、世帯の区切りがはっきりしない場合はそれをはっきりさせて家計管理を行い、また今後人数が増減するようなことが見込まれればそれを把握して計画に盛り込む必要があります。

2世帯

親子2世帯で暮らしているような場合、それぞれお世帯のお金のやりとりがはっきりしていないかもしれません。そのような場合は家計管理が難しくなります。支払のルールを作ったり、世帯ごとに案分(割合)を決めて食費や光熱費の支出を家計簿につけるような工夫をして、世帯ごとに収支が把握できるようにします。

重要なのはこれを相手世帯(自分が親の場合は子世帯、自分が子世帯の場合は親世帯)と話し合って決まり事にすることです。うやむやのままでは、管理はおぼつきません。

家族の増減

また、将来に関して子供が生まれ巣立っていったり、家族が亡くなるなどして世帯の規模は増減します。そのような場合は、将来の金銭的な計画も変わっていきます。将来を見据えて、家族のそれぞれをどこまで家計管理する必要があるのかを把握してください。具体的には、若い夫婦ならば子供の人数や受けさせる教育のレベル、共稼ぎの期間をどうするかという自分たちの希望をはっきりさせておくことと、親の老後の面倒を誰がどのように見るかということです。特に後者は話題に出しにくいことですが、誰かがいつかは考えなくてはなりません。

例えば、下の表は二人の進路がリストアップされています。姉は幼稚園から大学まで1700万円かかっているのに対して、弟は高卒で150万円しかかかっていません。これが本人の能力や希望に基づくものならば家計上は問題ないのですが、姉に教育費をかけ過ぎて弟が割りを食ったのならば、かわいそうです。

子が小さいうちから、全ての子供へバランスよく教育費を割り振り、教育費が足りない場合の方策を考えておく必要があります。

子のことについても、親のことについても、できる範囲で家族の間の認識を一致させておくことが必要でしょう。

収入

収入と税金と社会保険等の額を把握しておきます。

会社員の場合、収入は会社からの支払額で、年金や健康保険、それに税金は源泉徴収されています。他の世帯との比較のために、月々の給与の手取り額だけではなく支払額も把握しておきましょう。また、ボーナスは増減があり予算編成へ影響があります。月々の給与とは別に把握してください。

夫婦共稼ぎや親子で収入のある場合は、それを合算します。ただし、世帯で把握した共稼ぎや子供の独立による収入の変化は、計画に考慮します。また、副収入のある会社員の場合は、それも収入に含めます。

なお、自営の場合で業務と生活の間のお金の出入りを切り分けていない場合は、収入にしても支出にしても案分します。家計簿をつける際に、別々に管理するか、同じ家計簿で費目を分けて行う必要があります。

参考とすべき家計

家計管理のサイクルの全てのフェーズにて、参考にすべき家計があると管理が行い易いはずです。

例えば次のような場合に参考とすべき家計が欲しくなります。

過去実績

参考とすべき家計として、第一に考えられるのは、過去の実績です。すなわち、一年前の家計簿の値を参考にします。例えば、一年前の同月の食費が7万円だったのに、今年は14万円ならば何か異常があることになります。

過去実績との比較で難しいのは、家族の増減や成長によって、必ずしも昨年と同じ状況とは限らないためです。また、何年も家計簿を付けて家計の変動について上手に解釈できればよいのですが、初めのうちは経験も少ないので、過去の実績を参考にしてだけ家計管理を進めるのは難しいと思います。

統計値

家計は総務省の全国消費実態調査の 結果と比較するのが良いと考えています。これは、総務省統計局が5年おきに調査を行っている統計で、年収や家族構成、地域別の家計状況を一ヶ月当たり費目ごとの平均値として公 表しているものです。自分の家計を自分と似たような状況にある世帯の平均的な家計と比較する事で、無駄やがんばり過ぎが無い事を『目安として』確認できます。

従って、家計簿づけの費目は、この調査と比較しやすいように、その費目に準じます。結果的に年間予算と月間予算の費目もこれに準じます。

この統計値に問題があるとするならば、ここの世帯の事情が考慮されていないことです。公表されている値は、収入別や年齢別、または世帯人数別の平均値を記した表だけなので、自分の世帯にぴったり一致する表はありません。公表されている表の値を自分の世帯に合わせて読み替える作業が必要です。

また年齢や収支だけではなく、そもそも統計値がベストの家計を示しているのかという問題もあります。 例えば、将来やりたいことがある人は、隣の家よりもしっかりと倹約すべきだと思えます。これら将来の計画も加味して、統計値を家計の参考にするのがよいと考えます。